我が家の蔵
逗子にお住まいで古希をすぎた設計事務所の長島先生が、以前から「桐ケ谷さんところの蔵を見せてくださいよ」と言われ、文化庁の「登録有形文化財」に申請して欲しいと言われておりました。
蔵は桐ケ谷材木店二代目の利夫という人が建てたと聞いています。
恐らく明治の終わり頃だと思います。
すでに100年は経ているのでしょう。
5年位前に二度目の壁が剥げ落ちて、最初のときは近くの左官屋さんでやってもらったのが、2年でまた落ちてしまい、前回は本当の蔵の左官を手がけている専門の職人を頼んで修理しました。
この方は姫路城の白壁の修復にも携わった方のようで、作業を見ていても本当に職人の技のすばらしさにほれぼれしたものでした。
ついでに板壁の部分も修復したので、すっかり風格あるお蔵に変わりました。
実は、私は蔵の中にじっくり入るなんてことはしていなかったので、今回は電灯で照らして隅々まで見入りました。
屋根の下地の小屋組みとか二階の床組みとかはケヤキの角材で組まれていて、小屋はトラス組みになっているのにはびっくりしました。
私は、蔵などとはてっきり丸太組で太い松梁などで出来ているものと思ってましたが、トラスとは驚きでした。
先生方も、その時代では相当に先進的な工法になっていたのだろうと感心しておりました。
中は埃だらけでしたが、使ってるものは木や泥壁などの全て自然素材であるため、全く空気が澄んでいるような感じで、技術のすばらしさと人間の知恵の集大成のような何ともいえないいい気分に浸ってました。
よくあるお宝探偵団のように思いがけないお宝があるかもと思ってましたが、母も言っているように「ウチには何にもないのよ」というのも、その通りとうなづけました。
昔のひな祭りや今では使わないものの倉庫と化してました。
でも先祖が造ってくれた蔵をこれから内部を整理して、サロンとかギャラリーにでも改造してみたいと思います。
せっかくのものですから生かして使わせてもらうことにしたいと思います。
思いはあれど、すぐに改造とは計画が立ちませんが「登録有形文化財」にして、皆さんにお使いいただける建物に変身させたいと思っています。
母屋も100年くらいの建物だし、庭も母がよく手入れしていい感じであるので、一般的な洋風の庭とは違う趣の雰囲気が生かせる方法を考えてみます。